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JAMA Network Open誌から
新生児期の調整乳が小児の喘息リスクに関与
生後少なくとも3日間は牛乳由来の調整乳を避けるべき?

 東京慈恵会医科大学の田知本寛氏らは、アトピーリスクの高い新生児を対象に、母乳+アミノ酸ベースの調整乳(EF)と、母乳+牛乳由来の調整乳(CMF)による育児の喘息発症リスクを比較するランダム化比較試験を行い、生後少なくとも3日間CMFを与えなければ、喘息または反復性喘鳴の発症を抑制できる可能性があると報告した。結果は2020年10月2日にJAMA Network Open誌電子版に掲載された。

 喘息の有病率は過去60年間に上昇している。小児期の喘息の発症を予防すれば、有病率を低下させられる可能性があるため、様々な研究が行われてきた。2016年に発表されたメタ分析の結果は、2歳までの食物抗原感作が、喘息または反復性喘鳴リスク上昇に関係することを示していた。2018年には、乳児の食物アレルギーは、食物アレルギーが持続しているかどうかにかかわらず、幼児期の喘息または喘鳴のリスク上昇に関係することが示された。WHOは、生後6カ月間は母乳を与えることを推奨しているが、2010年に報告されたコホート研究のデータは、生後14日以内にCMFの定期的な追加を開始した乳児では、牛乳アレルギーの発症率が低いことを示唆していた。

 著者らは先に、Atopy Induced by Breastfeeding or Cow's Milk Formula(ABC)試験を実施した。慈恵大学病院1施設で行われたこの試験は、父母または兄弟の少なくとも1人がアトピー性疾患歴があり、アトピーリスクが高いと見なされた312人の新生児を生後すぐに登録し、非CMF群(母乳のみまたは母乳とEFで育てる)とCMF群(母乳と1日5mL以上のCMFを併用する)にランダムに割り付けた。出生日から3日以上、生後5カ月まで同じ方法で育てるよう指示した。ABC試験では、生後24カ月時点でアトピーの徴候(湿疹、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、反復性喘鳴と/またはアトピー感作)の有無を調べていた。

 ABC試験の主要評価項目である生後2歳時点までの追跡は、2018年5月31日に終了した。今回は、ABC試験でアトピーの徴候ありと判定された小児を、2020年1月4日まで追跡して喘息または反復性喘鳴の発症を調べた。非CMF群では151人中77人がアトピーの徴候ありと判定され、さらに中央値3.0年(四分位範囲2.0~4.2年、最長5.6年)追跡した。CMF群では151人中81人がアトピーの徴候ありと判定され、中央値3.3年(四分位範囲2.1~4.3年、最長6.0年)の追跡を行った。

 主要評価項目は、専門家による喘息と反復性喘鳴の診断に設定した。生後5カ月時点と24カ月時点で測定した、血清中の25-ヒドロキシビタミンDレベルと、総IgEレベルに基づくサブグループ解析も行うこととした。

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