日経メディカルのロゴ画像

【新薬】9価HPVワクチン(シルガード9)
9価HPVワクチン、子宮頸癌の原因となるHPV型の9割に対応

2020/10/23
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2020年7月21日、酵母由来の組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(商品名シルガード9水性懸濁筋注シリンジ)の製造販売が承認された。適応は「ヒトパピローマウイルス(HPV)6、11、16、18、31、33、45、52、58型感染に起因する次の疾患予防。(1)子宮頸癌(扁平上皮細胞癌、腺癌)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍[CIN]1、2、3および上皮内腺癌[AIS])、(2)外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2、3および膣上皮内腫瘍(VaIN)1、2、3、(3)尖圭コンジローマ──」、用法用量は「9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回筋肉内注射。通常、2回目は初回接種の2カ月後、3回目は6カ月後に同様に接種する」となっている。

 女性のがんとして乳癌に次いで2番目に罹患率が高いのが子宮頸癌。国立がん研究センターのがん統計によれば、子宮癌のうち子宮頸部のがんの国内の罹患率は10万人当たり16.9人、死亡率は10万人当たり4.5人であり、年間約1万人が罹患し、約3000人が死亡していると報告されている。罹患率は、20歳代後半から上昇し始め、30歳代がピークとなる。年々罹患率が上昇傾向にあり、近年社会問題となっている。

 子宮頸癌の原因のほとんどが、HPVの感染といわれている。HPVには100種類以上の型があり、子宮頸癌などの原因となるHPV16、18、31、33、45、52、58型などを含む「高リスク型」、尖圭コンジローマなどの原因となるHPV6、11型などを含む「低リスク型」に大きく分類されている。特にHPV16、18型は子宮頸癌の発症原因の約65%を、HPV6、11型は尖形コンジローマ(性器イボ)発症原因の約90%を占めるといわれている。発癌性HPVは80%の女性が一生に一度は感染するありふれたウイルスであるが、多くの場合は感染しても自己の免疫で排除されるため、子宮頸癌に罹患するのは感染した女性の1%未満とされる。一方で、感染しても十分に抗体価が上昇しないために、同じ型のウイルスに何度も感染する可能性があるともいわれている。

 シルガード9は、2価HPVワクチンのサーバリックス、4価HPVワクチンのガーダシルに次いで3番目となるHPVワクチン。既存のガーダシルに含まれるHPV6、11、16、18型に加え、HPV31、33、45、52、58型のL1蛋白質のウイルス様粒子(VLP)を含む酵母細胞由来の遺伝子組換え型9価HPVワクチンである。HPVの「高リスク型」と「低リスク型」いずれも含有していることから子宮頸癌だけでなく、尖形コンジローマ、VIN1、2、3およびVaIN1、2、3にも予防効果を有する特徴があり、子宮頸癌の約90%、グレード1のCINの約55%、グレード2/3のCINの約80%に予防効果があると期待されている。

 日本人を含む国際共同試験(001試験)をはじめとする複数の臨床試験により、本薬の有効性、免疫原性、安全性が確認された。海外では、2020年7月現在、世界80以上の国と地域で承認されている。

 本薬接種での副反応として、疼痛・紅斑・腫脹(10%以上)などが報告されており、重大な副反応としては、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹)、ギラン・バレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳髄膜炎(ADEM)を生じる可能性もある。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ